October 1, 2006
サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL4
M−AQUAです、だいぶ間があいてしまいましたが、
池上英樹さんの、5.1サラウンドDVD『Toucher』も発売になりまして、
いよいよ、サラウンドロケーションの中身についても、
こちらで具体的に書いていこうと思います。
サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL4です。
今回サラウンドのテストレコーディングを、
2005年の11月から実際に録音にはいる5月までの間で、
池上さんご本人での、テストレコーディングも含めると、
8回ほど行っています。
多くは、ライブハウスでの頭分けの録音でありましたが、
サラウンドロケをより確実な物にするために、
様々な、テストレコーディングを行いました。
VOL4では、池上英樹さんご本人でのテストレコーディングについて、
書いてみます。
2005年11月、都内の教会で、マリンバ奏者『池上英樹』さんの、コンサートが行われました。
この時には、DVD化の計画はまだなく、mikimixとM-AQUAで、
初めての共同サラウンド収録を行いました。
コンサートのリハーサル収録という事で、ホールでありながら、
堂々とマイクロフォンを、真ん中に立てました。
楽器はマリンバ1台、しかもかなり大型で、大人が両手を広げて、
2人分で、約3メートルほどの幅があった気がします。
この時は、FukadaTreeを準拠した、
比較的大きなマイクツリー(アレイ)を、立てました。
用意した5本のマイクロフォンは、ノイマンのKM184でした。
私はこのマイクロフォンを通常、ゴスペルクワイヤや、クラシックの
パートマイクとして使用しますが、今回晴れてメインマイクとなったのです。
ただし、補助として、DPA4006をA−B方式で立てましたが、
この時いくつものマイクアレイについて一つ疑問に思った所があります。
『多くのマイクアレイは・・・、
何故マイクロフォンの種類、型番を指定しないのか?』
私の在職時代はDPA(B&K)全盛で、
クラシックやアコースティックレコーディングのメインマイクロフォンに、
DPAを使用するチーフばかりでした。
私も、いろいろな選択肢の中で、マイマイクを購入するにあたり、
比較的早く自分の中のスタンダードを見いだせたのが、
このDPAでした。
そう、私がいいたいのは、DPA、ショップス、ノイマン、AKG等
独特のキャラクターをそれぞれのマイクメーカーが持っている以上、
型番&形式は非常に、サラウンドのマイクアレイを構築する上で、
重要なファクターではないのでしょうか?
特に、
無指向性では、
DPA4006 ノイマンM150 ショップス52S
単一では
DPA4011 ノイマンM147 ショップス54U
AKG C−451 ノイマンKM184
等、棒状のマイクロフォンが主に、考えられると思うのですが、
私の所有マイマイクで思った事が、
DPA4006とノイマンKM184では、持っているキャラクターが、
全然違うと思いました。
現場は、とてもとても、響きの豊かな教会でした。
そう、背面のSLSRのマイクアレイの情報量は、
非常に会場によって違うので、
言い方を悪くすれば、
『もしかしたら、感度が悪い方が・収音できる情報量が少ない方が良いのでは?』
と思ったのであります。
もともと、出身が放送ミキサーですので、オーディエンスマイクに対する考え方は、
かなり、特異な考え方だと思います。
そう、サラウンドのSLSR(サラウンドのリヤ側)のマイクは、
オーディエンスマイクによく似ているのです。
それは、演奏者の音源に対して、全く背面を向けるという事は、
もろ、背面に音源がくるという事ですよね。
これを、某Kさんという、サラウンドの先駆者的な、
ミキサーさんに質問をした事がありました。
明確な答えは、なかったのですが、逆に自分が、
オーディエンスマイクを立てるときは、距離はいろいろあっても、
もちろん観客席に向けますよね。
ただ、極性は、どちらか良い方にしても良いかもしれません。
有る著名なミキサーさんに聞いた話があり、
マイクの指向性と音色に関してこう思う所があります。
個々のマイクロフォンのキャラクターやくせは、
『背面の音色に非常に左右される』
これは、強烈です。
だって、指向性の範囲内の音色以外は、あまり正しい使い方とはいえないので、
皆、そんなアレンジが悪い、みたいな感じで判断すると思うのですが、
よく考えると、無指向性にしたって、単一指向性にしたって、
ダイヤフラムが、立体的にある以上、マイクロフォンのしいては、
ダイヤフラムの背面にあたる音源の音色も馬鹿になりませんよね。
ですから、なるべく、無理して指向性を作っている、
単一指向性を避けたアレイを探そうと思っていたのですが、
これがなかなか見つからない、というか、皆あまり良い結果が得られない、
という情報が多くネット上等に見受けられました。
また、選択肢の中で、棒状のマイクロフォンでないと、
アレイその物を近接し密集した時に、かなり影響もあるのではないかと思いました。
87は、あの筐体の鳴りも含めて、87なのだというのもうなづけるし、
今となっては、サラウンドアレイ専用のマイクが、何故開発されないのかも疑問です。
また、大きなアレイになればなるほど、もう一つ問題になったのが、
位相差、時間差です。
特に、マリンバの非常に早いアタックと、濃密で充満するような、教会の響き。
最初のテストレコーディングで得た物は非常に多かったような気がします。
マイクの事ばかり書いてみましたが、レコーダーとモニターについても、
いくつかの問題があります。
レコーダーは、SACDを見据えた、SONOMAシステムをレンタルして運用してみた。
実質オペレーターは、一口坂スタジオの原エンジニアであったが、端から見ていて、
とにかくでっかい、AD&DAだなと思いました。
また、24bit48Khzの録音機はFOSTEX製のハードディスクレコーダー、
D2424というレコーダーを使用しました。
在職中疑問であったのが、AESを複数本、5.1なら、3系統で、
6チャンネル分伝送した時に、非常に、トラブルが多かったような気がします。
もちろん、高精度なワードクロックジェネレーターで、ロックをかけていても、
Dolby−Eの入り口や、某電話局への入り口でも、
やっぱり、アナログの安定度、優位性があったと思います。
ここで、後々問題となるのですが、各チャンネルの位相について、
ステレオの何倍もシビアな面とラフで良い面と、
両方の面があるなと思いました。
実際に体験してみるまでは、謎が多かったのも事実です。
初めて自分自身でサラウンド収録のプランニングから、
実際に収録してみて、問題となった点は、以下の通りです。
・著名なマイクアレイは本当に必要なのか? また、どうなのか?
・5本のマイクアレイのメーカーと型番は、統一していた方が良い?・悪い?
・レコーダーへの収録系統の安定度と使いやすさは?
・サラウンドモニタリングをしても、本当に有益で、的確な判断はできるのか?
この問題は、年末から年明け3月までのライブハウスでのサラウンド収録で、
一つ一つ明かされていくと思うので、別の機会に書く事にします。
まず、2ch収録の時のような、エンジニアとして、
心の保険のような、悪くいれば『取れ高』的な感じが、
みじんも感じられなかったからです。
それは、会場も演奏も素晴らしく、この上ない条件なのに、
肝心の質感が、『どこまで録れているのか?』『どこまで捉えているのか?』
現場で、『何ができるのか?』『何をしていなければならないのか?』
実際にSONOMAのDSDと、D2424のPCMにはとてつもない、
世界が収録されているのを確認したのは、ずっとずっと、後の話でした。
とかくダークなイメージに聴こえる『慣れ』という言葉に、
変わる良い言葉はないのでしょうか?
そんな言葉を、セッションの中で生かしていけたら良いなあというところで、
2005年11月の教会のテストレコーディングのお話はここまでとします。
池上さんのテストレコーディングは、4月に2回行っていますので、
これもまた、お伝えしようと思っています。
私自身、サラウンドを、もっともっとやってみようと思ったのは、
この最初のテストレコーディングがきっかけでした。
ただし、『小さな小さな問題』と『大きな可能性』があるな。
これが、教会でのテストレコーディングの感想でした。
では、また。
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