前回の引き続き下見の話と、今回のプロジェクトにおける、
テストレコーディングについて、今日は書いてみようと思います。
まあ、下見下見といって、大手を振って、
予算を計上して下見に行けるプロジェクトだけでなく、
『自分が必要なだけ、必要な部分について確認する』
この当たり前なことが、やはり重要だと思います。
私がつとめ人をしていた時に、局外中継出身のある先輩が、
こういいました。
『確認は何度してもOK』
それまでスタジオにいた私は、なるべくなるべく、
ミュージシャンや、スタッフ間の雰囲気作りや、
必要の無い、言動&行動をさけることにより、
大きなセッションの流れをつくる。
こんな仕事のをすすめかたをしていたのですが、
ライブレコーディングでは大きく違いました。
そこで確認しなければ、あとは、
いつ本番が始まってしまうかわからない。
問題が有れば、必ず今追求し解決すること。
そして、不安があれば、必ず、確認する。
さっき生きていたマイクが、今死んでいる。
それは、下見の時も同じで、今思いついた、
収録上の不安な面、又は斬新なアイデアは、
もう次、いつ気づくかわからない。
しかも、忘れてしまうかもしれない
そうであれば、必ず確認する。
これは、どんなセッションにも通じることだと思いますが・・・。
仕事柄、
ちょっと通りかかったカフェ、
巨大な野外スペース、
様々なホール・スタジオ
少しでも演奏の可能性がある、場所に出会ったとき、
必ず想像します。
『ここで、演奏・録音・SRをしたらどんなことになるのだろう?』
いつも、そんな事考えながら生きてるのですか?
と聞かれたら、『そうです』と答えちゃいますね。
放送局を飛び出し、スタジオを持たない私の性分だと思いますが・・・。
ここで、サラウンドについて、重要なことがある気がします。
2チャンネルステレオの世界では、
必要な音と不必要な音の、『音のカブリ』すなわち、
アイソレーションが、問題になりますね。
聞き取りづらくないか?
他の音にマスクされないか?
音楽を乱すような音が存在していないか?
しかし、よく考えてみると、
人間普段から、自分についている耳は、
指向性があるようで、無いようで、意識を持って聴こうとすれば、
よく聴こえたり、聴こえなかったり・・・。
言いたいことは、下見で聴いたまま、
あたかも自分の耳で聴いたままの感じを表すのに、
サラウンドは非常によくできたメディアだと思います。
ステレオでは、そのいれ物の制限上、
よく聴こえたり、聴こえなかったりがあります。
サラウンドではその音源の方向性、すなわち、スピーカでリスナーと囲み、
立体的な音場を再現しようという、システムそのものが、
いわゆる、『聴いたまま』の、リアリティの1段階目に、
非常に近い感じがするのです。
そう、人間生まれた時から、そして、もっともっと前から、
後ろからも音は聴こえているし、
音は決して前からだけでているのではない。
これに、気づくまで私は相当疑心暗鬼になってました。
『音が後ろから聴こえることの不自然さ』
サラウンドが、小さな小さな問題を持っていることの一つに、
後ろから聞こえる音の違和感だと思います。
ですが、下見の時も、今皆さんが、このブログを見ている時も、
音は前からだけでなく、後ろや、上や、左右からも聴こえてますよね。
音そのものの方向性の意識改革をすることから、
違和感の払拭になると思います。
それは、もう既に皆さんは、サラウンドの収録に関しての下見というか、
立体音場の感覚の体験を、自分の耳でしてますよね。
ですから、そのまま、その音楽の感動を伝える手助けをすれば良いのです。
今回の池上氏のテストレコーディングは、都合3回。
また、ライブハウスでのサラウンドレコーディング
フィールド調査として、4回?
少し、字数が多くなったので、次回に、テストレコーディングのお話をします。
では、また。
M−AQUA
August 21, 2006
サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL3
August 12, 2006
サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL2
今回はテストレコーディングの前段階になる、下見についての投稿です。
放送・映画・舞台等、音声&音楽スタジオ以外の分野では、
常に映像が伴う分野ともいえますね。
特に、下見時に注意したいのが方向性です。
ここでいう方向性は、実際のカメラアングルや、舞台上での配置をさします。
舞台というのは、通常ステージ側と客席側が有り、
お客さんはステージに向かって正面を向いて座ります。
まれに演出で、ステージ外も使いますが、ほぼプロセニアムという、
額縁の用な物で、ステージには枠がついてます。
これは、今までの2チャンネルSTEREOの世界に、
似ていると思いませんか?
お客さんは、ごく簡単な決まりとして、
ステージ(スピーカーの方)の方を向き、プログラムを楽しむ。
ステージから溢れ出る音や、映像はもちろん平面的ではなく、
その劇場やスピーカーから放たれた瞬間に、
どんなメディアでも立体にはなるのですが、
『ステージからそのエナジーがでるとき、
スピーカーから音がでるときには、
その性質上方向性は決まった方向にしかでない』
反面、放送や映画等の映像メディアはどうでしょうか?
カメラという性質上、また、映画の発明有志以来、
カメラアングルやモンタージュ理論が多用され、
対象物をとらえる方向性に関して、最初から柔軟な考え方で
作品が制作されていましたね。
これは、もし音で実践しようとなると、こういう事です。
1曲目は正面を、2曲目は楽団が背後に回ります。
3曲目は空中でドラムが宙づりに、4曲目は地面からベースが顔を出して・・・
みたいな事ですよね。
より効果的に伝えるために、映像というメディアは、
方向性を良く考えて作られており、
我々音声技術者よりも、遥かに立体的に音や対象物を、
とらえる訓練と技術が備わっている気がします。
もちろん、音声の世界で、モノラル、ステレオでも、
その奥行き、左右の定位・パンニングは、
音声の先輩達のたゆまない努力で、沢山のノウハウが
引き継がれているとは思うのですが、
いかんせん、映像のように、
『ハイでは次のカットはどんでんです』
という事はなかなか無いですよね、
『どんでんとは』いままで、収録していた方向性の、
全く反対側にカメラが入るという事です。
むろん、照明、撮影、音声全部のスタッフが、お祭り騒ぎになります。
とくに、照明は、太陽光や光源の問題、音声ならば、背景音の方向性が
そして、撮影は、全てのうつり込みが問題になります。
もんだいになるならば、一部のお茶の間ドラマや、
ドリ○のステージコントのように、全て同じ方向から撮影すれば、
良いのではないかと思うでしょうが、
やはり、平面的な対象物(反対側にカメラがまわれない)を、
いくら技術を駆使しても、魅力的には捉える事ができないと思います。
人の目や耳、手で触る感覚というのは、常に立体的であるということです。
反面頭の中で考えた物事というのは、ほとんどが平面に感じませんか?
ですから、もともと、人間が立体的にモノを捉える機能が有るとするならば、
モノラルやステレオという制限された規格が、ここへきて、サラウンドになり、
やっと本来の人間の感覚に近い規格に、
バージョンアップしたと考えてよいのでは、無いでしょうか?
下見からだいぶ遠ざかりましたが、本題です。
ドラマのブームオペレーターをしてた時です。
『台詞は必ず、マイクロフォンを正面まで持って来てとらなければいけないが、
足音等のSEは、カメラのアングルを想像し、達成する事ができれば、
どこから録音しても、どこにマイクをおいても良い』
というように習いました。
また、その足音は、最終的に効果マンやフォーリーアーチストが、
足音をつけ直すためのガイドである場合もあるが、
それにしても常に方向性を考える必要が有る訳です。
カメラは、レンズに写らないもの、
レンズの画角からよければ、不必要な物は映りません。
照明は、バンドアで光を遮れば、不必要な光はもれません。
しかし、音は、回折効果のため、非常に方向性をコントロールするのは、
難しいです。
下見の時に何を想像するか?
音を想像するのです。
下見については、いろいろ書きたい事が有るので、
次回へ続きます。
放送・映画・舞台等、音声&音楽スタジオ以外の分野では、
常に映像が伴う分野ともいえますね。
特に、下見時に注意したいのが方向性です。
ここでいう方向性は、実際のカメラアングルや、舞台上での配置をさします。
舞台というのは、通常ステージ側と客席側が有り、
お客さんはステージに向かって正面を向いて座ります。
まれに演出で、ステージ外も使いますが、ほぼプロセニアムという、
額縁の用な物で、ステージには枠がついてます。
これは、今までの2チャンネルSTEREOの世界に、
似ていると思いませんか?
お客さんは、ごく簡単な決まりとして、
ステージ(スピーカーの方)の方を向き、プログラムを楽しむ。
ステージから溢れ出る音や、映像はもちろん平面的ではなく、
その劇場やスピーカーから放たれた瞬間に、
どんなメディアでも立体にはなるのですが、
『ステージからそのエナジーがでるとき、
スピーカーから音がでるときには、
その性質上方向性は決まった方向にしかでない』
反面、放送や映画等の映像メディアはどうでしょうか?
カメラという性質上、また、映画の発明有志以来、
カメラアングルやモンタージュ理論が多用され、
対象物をとらえる方向性に関して、最初から柔軟な考え方で
作品が制作されていましたね。
これは、もし音で実践しようとなると、こういう事です。
1曲目は正面を、2曲目は楽団が背後に回ります。
3曲目は空中でドラムが宙づりに、4曲目は地面からベースが顔を出して・・・
みたいな事ですよね。
より効果的に伝えるために、映像というメディアは、
方向性を良く考えて作られており、
我々音声技術者よりも、遥かに立体的に音や対象物を、
とらえる訓練と技術が備わっている気がします。
もちろん、音声の世界で、モノラル、ステレオでも、
その奥行き、左右の定位・パンニングは、
音声の先輩達のたゆまない努力で、沢山のノウハウが
引き継がれているとは思うのですが、
いかんせん、映像のように、
『ハイでは次のカットはどんでんです』
という事はなかなか無いですよね、
『どんでんとは』いままで、収録していた方向性の、
全く反対側にカメラが入るという事です。
むろん、照明、撮影、音声全部のスタッフが、お祭り騒ぎになります。
とくに、照明は、太陽光や光源の問題、音声ならば、背景音の方向性が
そして、撮影は、全てのうつり込みが問題になります。
もんだいになるならば、一部のお茶の間ドラマや、
ドリ○のステージコントのように、全て同じ方向から撮影すれば、
良いのではないかと思うでしょうが、
やはり、平面的な対象物(反対側にカメラがまわれない)を、
いくら技術を駆使しても、魅力的には捉える事ができないと思います。
人の目や耳、手で触る感覚というのは、常に立体的であるということです。
反面頭の中で考えた物事というのは、ほとんどが平面に感じませんか?
ですから、もともと、人間が立体的にモノを捉える機能が有るとするならば、
モノラルやステレオという制限された規格が、ここへきて、サラウンドになり、
やっと本来の人間の感覚に近い規格に、
バージョンアップしたと考えてよいのでは、無いでしょうか?
下見からだいぶ遠ざかりましたが、本題です。
ドラマのブームオペレーターをしてた時です。
『台詞は必ず、マイクロフォンを正面まで持って来てとらなければいけないが、
足音等のSEは、カメラのアングルを想像し、達成する事ができれば、
どこから録音しても、どこにマイクをおいても良い』
というように習いました。
また、その足音は、最終的に効果マンやフォーリーアーチストが、
足音をつけ直すためのガイドである場合もあるが、
それにしても常に方向性を考える必要が有る訳です。
カメラは、レンズに写らないもの、
レンズの画角からよければ、不必要な物は映りません。
照明は、バンドアで光を遮れば、不必要な光はもれません。
しかし、音は、回折効果のため、非常に方向性をコントロールするのは、
難しいです。
下見の時に何を想像するか?
音を想像するのです。
下見については、いろいろ書きたい事が有るので、
次回へ続きます。
August 10, 2006
サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題 VOL1
M−AQUA(エムアクア)の富正和です。
今回、池上英樹さんの、DVD制作、
サラウンドレコーディングロケーション部門において、
ライブレコーディングのシステム構築および、運用を担当しました。
レコーディングエンジニアの三木康広さんのサポートを含め、
何回かに分けて、このプロジェクトにおけるレポートを、
サラウンドロケーションにおける可能性と(小さな小さな問題)
として、投稿したいと思います。
今回は、ほんの少しだけ、私のバックグラウンドをお話します。
私は、東京は新橋の音響技術専門学校を卒業後、
日本放送協会に平成4年に入局、主に音声技術に従事してきました。
平成15年10月退職と同時に、前述のM−AQUA(エムアクア)
を設立しました。
M−AQUAは、ジャズ・ゴスペル・アコースティックを中心に、
『SR(PA)』と『LiveRecording』
両ジャンルの『LiveMixing』を行っています。
私が、最近好きな言葉なのですが、
『LiveMixing』
このなかには、SRやダイレクト2のミキシングだけでなく、
このブログの主眼である、サラウンドミキシングも含んでいます。
在職中に、スタジオでの5.1のサラウンドレコーディング
のアシスタントを、ほんの少しだけ担当したことはあっても、
ほとんど興味を持ちませんでした。
また、サラウンドロケーションの現場も、見学にいきましたが、
それは、大変な労力と、手探りの状態に見えました。
私が興味を持てなかった第一の理由は、
システムが複雑で、規模が大きくなるという事です。
スピーカーが2個→6個 マイクも2個→6個
MAのミクシングを体験した方ならわかると思いますが、
完成トラックが2ch→6ch(+2chも作ると8ch)
24チャンネル程度のハードディスクレコーダーや、
ProToolsLEの、最大18chだと、
ステレオのミキシングをするのと比べ、
だいぶ制約が有るという事です。
しかし、最初に書いてしまおうと思いますが、
再生条件から、逆算すると、6ch(5.1)の
再生条件からすれば、録音時の膨大な情報量を、
ほぼそのまま、伝えれば言い訳で、
2chの時にやっていた、
『詰め込んだり』『情報がマスクされたり』
といった事がかなりなくなると思いました。
もとい、今回の制作段階、
特に何度も重ねたテストレコーディングから、
本番のロケーションに入るまでには、
『ステレオ崇拝&サラウンド拒絶』は
『ステレオ経験を生かした&サラウンド受け入れ』
にかわって行きました。
それぞれの場面で、
『サラウンドロケーションにおける可能性と小さな問題』
を投稿していこうと思っています。
次回投稿をおまちください。
いや、投稿だけじゃなくて、発売もお待ちください。
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